こんにちは。
宮城県岩沼市の
いわぬま矯正歯科クリニック院長小森です。
今回はインプラント矯正に関して、ご説明させていただきます。

株式会社プロシードホームページより引用
インプラント矯正とは?
インプラント矯正とは、歯ぐきの骨にスクリューやプレートを取り付け、動かしにくい歯を動かしたり大きく歯を動かすなど、歯列矯正の補助をする治療法です。
デンタルインプラントとの違い
インプラントと聞くと「歯の無い所に埋めるもの」というイメージがあるかもしれません。

ですが、そもそもインプラントとは体内に埋め込む医療機器・材料全般を指します。医科では人工関節やペースメーカーがそれに当たるため、人工歯根を歯ぐきに埋め込むいわゆるインプラントは、デンタルインプラント(歯科インプラント)と呼ばれます。
デンタルインプラントは、歯ぐきに埋め込むインプラント体、歯ぐきの上に出てくる義歯、インプラント体と義歯をつなぐアバットメント、以上3つの構造から成り立っています。
歯が抜けている箇所に入れて、咬み合わせや見た目を良好にします。
インプラント矯正の種類
インプラント矯正は大きく2種類に分けられます。
スクリュータイプ
ネジ(ビス)状の物を歯ぐきの外から埋め込みます。ネジ部分は歯ぐきの中にありますが、ネジ山は歯ぐきの外に残ります。
歯ぐきの切開がいらないので術者である歯科医師は比較的容易に施術できますし、受ける患者さまにとっても腫れや感染が少ないです。しかしネジ一本で支えるため、後述のプレートタイプに比べて力が弱く外れやすい欠点があります。
最近では、複数のスクリューで歯ぐきの外に大型の装置を取り付ける手法も出ています。

プレートタイプ
歯ぐきを切開して、プレートを直接骨にネジ止めする物です。骨折した時に使用されるプレートと同じように設置して、歯ぐきは縫合するので設置部分は歯ぐきの中に埋まります。歯を動かすためのフックだけが歯ぐきの外に出てきます。
インプラント矯正はこのプレートタイプが先行して始まりました。東北大学歯学部歯科矯正学講座(当時)の菅原準二先生(現・仙台青葉クリニック)を中心にSAS(Skeretal Anchorage System)が開発され、その後のスクリュータイプなどのインプラント矯正につながっていきます。
骨の硬い部分にしっかり固定されるので、外れにくく大きな力をかける事ができる一方、装着する時だけでなく外す時も歯ぐきの切開を必要とするため、腫れやすく身体的な負担が大きくなります。

インプラント矯正のメリット
それでは従来の歯列矯正に比べて、インプラント矯正にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
治療期間の短縮
歯を抜いての矯正治療では、抜いたすき間を埋めるために前歯と犬歯(八重歯)を動かします。通常の歯科矯正治療では、奥歯の力で前歯と犬歯を後ろに引っ張ります。その際、奥歯が物理の「作用反作用の法則」で変に動いてしまわないように、①犬歯のみ動かす、②前歯を動かすの順番で進めて行きます。
しかし、インプラント矯正ではインプラントの力で前歯と犬歯を後ろに引っ張ります。奥歯に変な力がかからなくなるため、前歯と犬歯を同時に動かす事が可能になります。その分、治療期間の短縮につながります。
矯正装置の簡略化
従来の歯科矯正では奥歯を手前に寄せないために、ヘッドギアと呼ばれる装置を使用します。ヘッドギアは一般的に子どもの出っ歯の矯正に使用される物ですが、大人の矯正治療でも使われます。
ですが、夜寝る前に装着する必要があるなどめんどうくさいだけでなく、つけるのを忘れると治療の進行に影響を及ぼす可能性があります。
インプラント矯正は患者さま自身で何かを取り付けるなどの作業はほとんど無いので、装置自体小さくなりますし、つけ忘れて治療が進まないという事もなくなります。
抜歯の可能性が低くなる
歯の凸凹を解消するには、①前歯を前に出す、②歯ならびを横に広げる、③奥歯を後ろに押し込める、以上の方法があります。
成人になると従来では③の手法が難しく、見た目や骨格的な問題から①と②の手法も取れない場合は、歯を抜いてすき間を作る手法が取られていました。
ですが、インプラント矯正は大きな力を加える事ができるため、奥歯(大臼歯)を後ろに押し込める手法で抜歯を回避する事が出来るようになりました。

外科矯正の可能性が低くなる
外科矯正という手法があります。
骨格的に大きなズレがあるために通常の歯列矯正では治療が難しい場合、骨を切って移動させる事で歯のズレだけでなく骨のズレも修正するものです。
骨のゆがみが解消されたり健康保険が適用になるなど長所もある一方、数週間の入院を必要とするなど短所もあるので、治療をためらう方が多いです。
インプラント矯正は骨のゆがみはあまり解消できませんが、歯のズレに関しては大きく解消できます。この事から外科矯正を回避できる可能性が大きくなりました。
また、インプラント矯正は健康保険適用の治療に使用する事ができます。従来では難しい状態も治療することが可能になっています。


インプラント矯正のデメリット
インプラント矯正は良い事ばかりではありません。デメリットもご説明させていただきます。
局所麻酔を必要とする
歯ぐきに埋め込むため、局所麻酔が必要になります。一般的に歯列矯正は麻酔を使わないので、デメリットと言えるかもしれません。

外れる可能性がある
骨の硬さや形状によって、スクリュータイプは外れてしまう可能性があります。
外れた場合、その都度場所を変えて入れ直しをする必要があります。
感染症を起こす可能性がある
インプラント矯正はスクリュータイプでもプレートタイプでも、歯ぐきの内から外に出てくる部分があります。口の中は細菌だらけなので、汚れをそのままにしていると歯ぐきの中に細菌が入り込んで感染症を起こします。
炎症など腫れるだけでなく、装置を外さなければいけない可能性があります。
歯ぐきを傷つけないように少しやわらかめの歯ブラシで、周りを綺麗に保つ事が必要です。
治療費が上がる
健康保険適用外の歯列矯正は歯科医院ごとに料金体系が異なるため一概には言えませんが、インプラント矯正は通常の矯正に比べて治療費が上がります。
スクリュータイプであれば数万円程度、プレートタイプであればスクリュータイプの数倍程度費用がかかります。
成長期の若年者は適さない
「子どもの骨はやわらかい」という話を聞いた事があるかもしれません。大人の骨に比べて子どもの骨はコラーゲンなどの軟骨成分が多いため、骨はやわらかい状態です。
例えると、釘を木ではなく豆腐にさすような物なので安定しません。
そのため、高校生くらいまでインプラント矯正は待つ必要があります。
まとめ
インプラント矯正によって、歯の移動できる範囲が広くなりました。
大きなメリットがありますがデメリットも当然あります。
受診する歯科医院さまで相談して、ご納得して進めていただければと思います。
当院では、株式会社プロシードさまのスクリュータイプを使用しています。