こんにちは。
宮城県岩沼市の
いわぬま矯正歯科クリニック院長小森です。
今回は「目立たない矯正」についてご説明していきます。
歯列矯正は目立つからイヤです
歯列矯正をしたいけどためらっていた、そんな方々がおられるのですが、その理由のひとつに、「目立つ装置がイヤだった」というものがあります。
子どもの矯正であれば、夜だけつけるようなマウスピースや歯の裏側からの装置など、目立ちにくい装置がメインです。しかし、大人の(中高生以降の)歯列矯正治療は、従来マルチブラケット装置と呼ばれる歯の表側からの装置が一般的です。
ここ十数年で、歯列矯正の装置は様々な種類の物が生まれてきました。そのトレンドは「目立たない」という事です。「目立つのはイヤ」という患者さまからのニーズに応えて、矯正装置は開発されています。
アメリカをはじめ欧米ではこれまで、「歯の矯正をするのは当然の事であり、一定の収入があるステータス」と考えられていたため、歯列矯正の装置は目立って当たり前とされてきました。それに対してアジアの国々では、「矯正装置は異質」という考えが根強くあり、なるべく目立たないようにする事が良しとされていました。
しかし、ここ数年で欧米でインビザラインなどマウスピース矯正の技術革新が進んだため、アメリカであっても「目立たなくなるのであればそれに越したことはない」という考えに移行してきたように感じます。
目立たない矯正には様々な種類がありますが、今回は3つに絞ってその特徴をご説明しようと思います。
白いワイヤーでの歯列矯正
通常ワイヤー矯正では、ニッケルチタン合金やステンレススチール合金などの金属が使用されます。どちらの色も銀色ですので、口の中では浮き上がって見えます。
そのため、ワイヤーの表面を歯の色に近い白色にコーティングして目立たなくするという発想が生まれました。
1 どのような症状でも治療可
白いワイヤーといっても、コーティングしている以外は普通のワイヤーと変わりませんので、従来の歯の表側の装置と治療法は同じです。そのため、従来の治療でできる症状はすべて白いワイヤーでも治療可能です。
ただし、通常のワイヤーよりコストがかかるため、多くの歯科医院では料金が上がります。また、健康保険が適用される歯列矯正(歯の矯正で健康保険はききますか?#17を参照してください)は元々通常のワイヤーで点数設定されていますし、コーティングが感染を起こしてしまうなど手術の妨げになる可能性があります。そのため、保険適用の治療を白いワイヤーでおこなう医療機関はあまりありません。
2 コーティングがはがれる事がある
通常のワイヤーに白いコーティングを一層つけているだけなので、歯みがきなどでコーティングがはがれる事があります。ワイヤーによっては数か月同じ物を使用する事があるため、はがれる可能性は高まります。
従来のコーティングワイヤーは、コーティングが表側のみされていたためはがれやすかったのですが、最近はワイヤー全体にコーティングしてあるものも開発されたので、はがれる事が少なくなってきています。
3 歯の表側に装置がある事に変わりはない
通常のワイヤーに比べて目立ちにくくはありますが、歯の表側に装置がある事は同じです。他の目立たないとされる装置に比べると若干弱いです。
歯の裏側からの矯正(舌側矯正)
従来の歯の表側からの装置に対して、歯の裏側からマルチブラケット装置を装着して歯を動かす方法があります。舌側矯正(リンガル矯正・裏側矯正)とよばれるものです。
以前はワイヤーをゴムや針金で結びつけるタイプのブラケット(ワイヤーを固定するための歯につけるボタン)が多かったですが、現在はセルフライゲーション(ふたを閉じてワイヤーを固定する)タイプのブラケットが主流になりつつあります。
1 比較的多くの症状で治療できる
舌側矯正は従来の装置とは歯の動かし方が違うのですが、ワイヤーで動かす事は一緒なので比較的多くの症状で歯列矯正が可能です。
2 他の装置と組み合わせが可能
上下の歯に舌側矯正で治療する方法が正式な治療なのですが、装置が目立つ上の歯だけ裏側から装着し、通常では見えにくい下の歯を従来の表側(唇側)の装置にする事も可能です。
3 装置が他の歯に当たりやすい
過蓋咬合(前歯が上下的に深く重なっている)などの不正咬合によって、矯正装置が他の歯と咬んでしまう事があります。表側の装置もそのようになる場合があるのですが、舌側矯正は上の前歯の裏側に装置があるため下の前歯に当たってしまう可能性が高いです。
4 話しにくくなる
舌側矯正は歯の裏側に装置がつくため、目立ちにくい利点はありますが、舌を動かしたとき装置に当たりやすく、しゃべりにくくなる場合があります。特に下の奥歯の内側(舌側)に装置が付けられると、人によってはかなり舌がすれてしまいます。
5 歯科医師が高い技術・知識を必要とする
通常、大学で舌側矯正を勉強する機会はありません。卒業して大学病院の矯正歯科で専門にしていたとしても、従来の歯列矯正がメインなので舌側矯正で治療することはほとんどありません。
大学教授をはじめ大学病院で診療している歯科医師で、舌側矯正を理解している人があまりいないのが理由なのですが、ある程度診療している患者数が多くないと技術や知識は上がりません。
そのため、矯正歯科を専門にしている歯科医師でさえ、歯の裏側からの矯正理療の診療をしている方は多くありません。
6 歯がみがきにくい
歯の矯正は基本的に歯がみがきにくいです。
外から見えやすい表側でさえみがきにくいのに、裏側にあればさらにみがきにくさは増します。しっかり磨かないと虫歯や歯周病になる可能性があり、装置を外して治療する事になれば矯正治療の期間が延びてしまいます。
マウスピース矯正
1 治療できる症状がある程度限られる
マウスピース矯正は従来のワイヤー矯正と歯の動かし方が一部異なるため、苦手とする症状があります。
それでも治療する方法はあるのですが、それができる歯科医院は限られます。
2 金属を使用しない
ワイヤーを使う矯正治療は何かしらの金属を使用しますが、マウスピースやアタッチメント(歯に取り付ける出っ張り)は金属ではありません。そのため、金属アレルギーを持った方でも治療が可能となります。
3 装置が壊れにくい
ブラケットの取り付けは接着剤を用います。そのため、何かしらの衝撃がくわわると装置が外れてしまいます。そのような事態になると、ワイヤーが刺さってしまったりするので歯科医院で処置が必要となります。
マウスピースも壊れないわけではないのですが、何かがあったとしても刺さって痛い事はほとんどありません。あったとしてもマウスピースを外すだけで対応ができます。
4 歯科医院での診療時間が短い
ワイヤーの調整はある程度歯科医院での診療時間がかかります。ですが、マウスピース矯正は最初の取り付けは時間がかかりますが、日頃の診療はあまり時間がかかりません。
5 歯を磨きやすい
ワイヤー矯正など歯に直接とりつける装置は、基本的に歯を磨きにくくなります。マウスピース矯正は、外せばアタッチメントはついているものの歯は磨くのに困難はありません。
まとめ
「目立たない装置」といっても色々な物があり、長所・短所があります(インビザラインは失敗しませんか?も参照してください)。
このブログで自分に合った治療は何かを理解して頂ければ幸いです。